Japanese
English
特集 気腫化病変の早期診断をめぐって
肺内弾性線維・膠原線維の微細構造と気腫化
Ultrastructure of Pulmonary Elastic Fibers and Collagen Fibers and Emphysematous
福田 悠
1
Yuh Fukuda
1
1日本医科大学第1病理学
1Department of Pathology 1, Nippon Medical School
pp.229-233
発行日 1996年3月15日
Published Date 1996/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901209
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はじめに
肺胞は,ガス交換のために特殊に分化した構造をもっている.空気・血液関門を確保するために,肺胞毛細血管網を一層の基底膜を挟んで,薄いI型肺胞上皮細胞が被っている.肺胞上皮細胞上には,サーファクタントに被われた薄い液層があり,肺胞の表面張力を減少させている.このような繊細な構造を持つ肺胞壁は,その骨格といえる間質により支えられている.肺胞の間質は,基底膜・弾性線維・膠原線維をはじめとする細胞外基質と,これらを主に産生・維持している間質細胞から成り立っている.呼吸運動に伴う胸腔内の陰圧環境下で,肺胞壁をはじめとして気道,血管,胸膜,小葉隔壁に存在する弾性線維・膠原線維がお互いに引き合うことにより,正常な三次元的肺胞構造を維持している.弾性線維の存在により肺胞壁はしなやかとなり,膠原線維により丈夫な構造を保っている.
肺気腫は,「肺胞壁の破壊を伴い,終末細気管支より末梢領域の異常な不可逆的拡張を特徴とし,明らかな線維化を示さない慢性肺疾患」と定義されている1).このように,肺気腫は形態的変化が重要視された疾患単位である.ここでいう肺胞壁の破壊とは,細胞外基質の破壊が主なものであり,本稿では,肺気腫,肺気腫類似病変に認められる弾性線維・膠原線維の変化について述べる.
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