Japanese
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綜説
産褥性心筋症の診断と治療
Diagnosis and Therapy of Peripartum Cardiomyopathy
落合 久夫
1
Hisao Ochiai
1
1横浜市立大学医学部第2内科
1The Second Department of Internal Medicine, School of Medicine, Yokohama City University
pp.325-331
発行日 1995年4月15日
Published Date 1995/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901032
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産褥性心筋症Peripartum cardiomyopathy(PPCM)は,心疾患の既往のない健康な婦人が,妊娠末期から産褥期にかけて心不全を生ずる,原因不明の稀な心疾患である1〜3).WHO/ISFC合同委員会(1980)の提案により周産期性(産褥性)心疾患Peripartal heart diseaseとも呼ばれる4).欧米では1849年にRitchieら5)が,本邦では1938年に馬杉らが最初に報告したとされている6).拡張型心筋症Dilated cardiomyopathy(DCM)に類似するが,妊娠に伴う多くのストレスや,免疫機能,内分泌,血行動態の変化は,PPCMの病態生理をさらに複雑なものにしている.近年,DCMはウイルス学,免疫学および遺伝学的な解明が進んでおり7,8),PPCMについても同様に,心筋障害における免疫と感染の役割の解明に研究が進んでいる.
PPCMが周産期に発症することから,母体の免疫機能や循環動態の変化を理解することが重要である9,10).急性期の死亡率は高いが,濃厚な治療により早期に心機能を改善すれば,DCM以上に予後を改善できる可能性があり,PPCMを独立した疾患単位として扱うことは,臨床的に意義がある11,12).PPCMの病因については多くの議論がなされたが,ウイルス性心筋炎説を疑問視する意見もあり,統一された見解はない.本邦では症例報告は散見されるが,まとまった解説は少なく13,14),診断基準の論議も十分とは言えない.そこで,PPCMに対する考え方の変遷を整理するとともに,最近の診断と治療について具体的に解説する.
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