連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・27
帝王切開翌日に発症した産褥性心筋症の1例
滝澤 基
1
,
星 和彦
2
1山梨県立中央病院総合母子医療センター
2山梨大学医学部産婦人科
pp.1409-1412
発行日 2007年11月10日
Published Date 2007/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101611
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症例
患者:42歳,主婦.0経妊・0経産,身長140cm
主訴:帝王切開翌日の呼吸苦
既往歴:特記すべきことなし.
現病歴:妊娠30週1日,低置胎盤,妊娠高血圧症候群にて当院に母体搬送となった.性器出血を認め,切迫早産の診断にて塩酸リトドリンの持続投与を行った.また,腟洗浄とクロラムフェニコール腟錠の連日投与を行った.グッドマンマルチウス撮影にてCPDと診断し,分娩は選択的帝王切開とした.術前の胸部X線および心電図検査にて問題は認められなかった.
妊娠37週1日に脊椎麻酔下に選択的帝王切開を施行した.手術時間は45分,術中出血1,470ml,術中補液2,850ml,自己血200mlの輸血を施行した.術後の全身状態は良好で,尿の流出も良好であり,心不全の徴候などは認めなかった.新生児は3,252 gの男児にて,出生後の経過は良好であった.母体は帝王切開当日の経過は良好であったが,翌日の産褥1日に突然の呼吸苦が出現した.SpO2が89%まで低下し,酸素60%投与下でもSpO2が90%台前半までしか上昇しなかった.表情が苦悶様であり,坐位でうつぶせのみしか体位が取れず,チアノーゼが出現した.胸部X線にて末梢血管陰影の増強を認めた(図1).
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