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はじめに
このところ情報と通信の分野では,「情報ハイウェイ」と「マルチメディア」がキーワードである.これは周知のように,アルバート・ゴア・ジュニア米国副大統領の「情報スーパー・ハイウェイ」構想,すなわち2015年までに全米に光ファイバーケーブルを張り巡らせて,自動車のインターステート・フリーウェイに対応する情報のスーパー・ハイウェイをつくるという計画がきっかけになったものである1).
日本でも,NTTが2015年までに全家庭に光ファイバーを引き込む,Fiber To The Home計画を発表している.
情報ハイウェイという情報伝送の基盤設備を整えることによって,継ぎ目のない,双方向の,統合的ディジタル情報通信を可能にして,最終的には,計算機・データ・電話・放送・CATV・出版・映画など情報関連産業の融合をはかり,近い将来,新しい情報産業の巨大市場を育成することが期待されている.そこではマルチメディア通信によって,パソコンとテレビが合体したスマートテレビや,バーチャル教室,バーチャル病院などが実現すると考えられている.
情報ハイウェイ構想を実現するためには,技術的,ないし財政的対策も重要であるが,むしろより大きな問題はマルチメディア通信の適用対象分野とその内容にある.「超高速の情報伝送路をいったい何に使うのか?」,「このような情報インフラストラクチャがわれわれの社会にどのような新しい変化をもたらすのか?」,「このような設備は本当に必要なものなのか?」といった疑問にそれなりの回答が必要とされている.この点で,医療や福祉・健康関連の分野は,ゲームやビデオ・オン・デマンドなどのエンターテインメント分野と並んで,情報ハイウェイの応用市場の大きなターゲットのひとつとして期待されている.
実際,現行の医療はビジネスの市場としてみると政策的・社会的・倫理的な規制が非常に多いために,従来から情報通信関連の新しい技術を用いた広域の医療情報システムは,実験的プロトタイプの段階を越えることが大変困難であった.しかし,少し考え方を変えれば,この事実は将来,このような規制が撤廃ないし緩和された場合には,逆に大きく市場が開けると期待できることを暗示している.放射線医用画像のディジタル的な計測とその伝送,処理,表示および総合的保管をめざすPACS(総合医用画像管理システム)は,医療へのマルチメディア技術の適用対象として,もっとも有望なもののひとつである.
ここでは,情報ネットワークと医学教育まで含めて,広い意味でPACSに関連した3つのプロジェクトを紹介して,情報ハイウェイ時代のPACS開発の方向を考察する.
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