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綜説
フラクタル幾何学からみた気道構築
Air Way Architecture froM a Fractal Point of View
北岡 裕子
1,2
,
高橋 徹
3
,
宮島 佐介
4
Hiroko Kitaoka
1,2
,
Tohru Takahashi
3
,
Sasuke Miyazima
4
1北岡病院内科
2Department of Anatomy, University of Berne
3東北大学加齢医学研究所病態臓器構築研究分野
4中部大学工学部工業物理学科
1Department of Internal Medicine,Kitaoka Hospital
3Department of Pathology, Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University
4Department of Engineering Physics, Chubu University
pp.1141-1148
発行日 1994年12月15日
Published Date 1994/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900966
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はじめに
血液循環や換気など,臓器の機能を数理的に記述することが生理学の課題のひとつであるならば,臓器構築を幾何学的に表現することが前提とされる.臓器構築を研究する学問分野は即ち形態学であるが,形態を数学的に表現する試みは先人の努力にもかかわらず,まだ満足すべきものではない.臓器の構造は単純な幾何学図形に還元できるものではなく,構造が本来存在している3次元空間での解析となると,理論的にも技術的にも高度な数学的処理が必要とされる.また,人間のもつパターン認識の能力はその数学的能力に比べてはるかに優秀なため,定量的な記述に翻訳するまでもなく,蓋然性の高い形態識別ができてしまうところに,形態の数学的表現が滞っている原因があると思われる.
Mandelbrot1,2)が約30年前に提唱したフラクタル幾何学は,一般的な数学的素養で十分理解でき,適用可能な対象も幅広いので,コンピュータ科学の進展とあいまって,近年急速に諸分野で応用されている.カオス力学で現われるストレンジアトラクタや,自己組織化のモデルの一種であるオートマトンとも深く関連しており,生命現象を含めた自然の理解にフラクタルを応用する試みが,諸分野の垣根を越えて現在活発に研究されている.いわゆる“複雑性の科学”3)にあって,フラクタルは重要なキーワードのひとつである.
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