視座
幾何学の心と繊細な心
山本 吉藏
1
1鳥取大学医学部整形外科学教室
pp.903
発行日 1990年8月25日
Published Date 1990/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408900160
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ひとは繊細な心と幾何学の心を持つといわれる.この言葉は,確かパスカルのパンセ(瞑想録)の中にあったように記憶している.その言葉の表現は,瞑想録のオリジナルと多少違っているかもしれないが,この一対の言葉が,私の心の片隅に以前から住みついている.
このパスカルの言葉は,整形外科医にとっても味わいのある言葉であろう.整形外科はbone and joint surgeryといわれるごとく,人体に対して幾何学的作業を行う外科である.その代表的なものは,骨切り術,人工関節術であり,また,脊椎の手術でもある.特に,骨切り術では内・外反の角度や,回旋・回転角度の正確さが必須であり,人工関節手術においてはインプラントの設置角が予後を左右する.したがって,術者には精密な幾何学的な心が要求される.一般外科の手術操作には大なり小なりこのような心が必要とされるが,整形外科では特に重要で,整形外科独得なものといっても過言ではない,術直後には必ずX線像により出来上がった画像の評価を行い,この結果で,術者は満足したり,不満足でいつまでも気に掛かり落ち着けないこともある.
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