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特集 慢性心不全の考え方
慢性心不全における治療薬効果判定
Evaluation of Efficasy of Anti-Heart Failure Drugs
伊東 春樹
1
Haruki Itoh
1
1心臓血管研究所付属病院
1The Cardiovascular Institute
pp.649-658
発行日 1994年7月15日
Published Date 1994/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900891
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心不全治療の最終目標は,言うまでもなく生命予後の改善とQuality of Life(QOL)の改善である.心不全治療薬の臨床試験では生命予後の改善についていわゆるsurvival studyが行われ,特定の治療薬の予後に対する有用性を判断できるが,日常の診療では個々の患者を対象に生命予後に対する心不全治療の効果判定は不可能である.したがって,通常は大規模臨床試験で長期予後に悪影響を及ぼさないとされた薬剤を投与して,患者の症状や,運動耐容能を評価し,activity of daily living(ADL),ひいてはQOLの改善を評価することとなる.
一方,「心不全」は心機能障害により惹起された運動制限とうっ血症状を特徴とする症候群であり,その原因疾患や主体となる血行動態異常もさまざまである.当然,病因の多様性は症候の多様性,さらに治療法や治療目的の相違をも意味する.たとえば僧帽弁狭窄症などは,心拍出量は少なく全身の低灌流状態はあるが,これは左室機能不全によるものではない.むしろ肺うっ血と右心不全を主体とする心不全となる.他方,虚血性心疾患や高血圧性心疾患による心不全は左心機能の低下が主体であり,右心不全はあっても二次的なものとなる.また拡張機能不全,収縮機能不全のいずれが主体となるかなど,一概に「心不全」といっても心血行力学的にかなりの差があり,治療方針のポイントをどこにおくかは異なる.
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