特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅰ.受容体に作用する薬物
1.イオノトロピック受容体
1)陽イオンチャネル内蔵型
アデノシン受容体
黒田 洋一郎
1
Yoichiro Kuroda
1
1東京都神経科学総合研究所分子研究係神経生化学部門
pp.333-337
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901598
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ATPとその分解物であるアデノシン化合物が,“進化的に最も原始的なオリジナル神経伝達物質,神経ホルモンである”というpurinergicsynapse説はG. Burnstockにより1972年に提唱されていたが,最近これらプリン化合物とその受容体の生体調節における重要性が,さまざまな面で明らかになりつつある。ことに脳神経系では,後で詳しく述べるように,記憶・学習や睡眠などわれわれの生活に密接に関係した脳機能を直接,間接にコントロールしていることが判明し,各種治療薬への応用の試みも多くなった。それに伴い,受容体の同定,分類など分子・細胞レベルの研究も近年急速に進みはじめ,これから益々盛んになる分野といえる。
ATPはあらゆる細胞の主要構成成分,エネルギー源であるばかりでなく,多くの中枢や末梢の神経終末のシナプス小胞中に高濃度で存在し,アセチルコリンやグルタミン酸など,他の神経伝達物質と共にシナプス間隙に放出される。こうして刺激(インパルス)頻度に比例して放出されたATPは,各種ATP受容体(別項参照)に作用したり,エクトプロテインキナーゼのリン酸ドナーになりシナプス膜蛋白質の細胞外ドメインリン酸化を起こし,シナプス伝達やシナプス形成に直接・間接に働いている。
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