Ischemic Preconditioningと酸素フリーラジカル

The Role of Oxyradicals in the Mechanism of Ischemic Preconditioning

はじめに

　短時間虚血，再灌流の反復は心筋を続発する持続性虚血に対し抵抗性にし，虚血障害の進行を遅らせる．この現象はischemic preconditioning（PC）と呼ばれ，当初報告されたイヌ^1）の他にも，ブタ^2），ウサギ^3），ラット^4）などで確認されている．代謝的には，PCは続発虚血時のATP，creatine phosphate，細胞内pHを保持することが報告されている^5,6）．

　PCの心筋保護機序は明らかでないが，LiuらはAdenosine receptor antagonistの8-p-sulfo-phenyl theophylline（SPT）やPD 115199がPCによる梗塞縮小効果を減弱させること^7），Thor-ntonらはA₁-receptor agonistのN⁶-（phenyl−2R-isopropyl）-adenosine（PIA）や2-chloro-N⁶-cyclopentyl adenosineの虚血前投与がPCと同様な梗塞縮小効果を有すること^8）をそれぞれ報告し，現在のところadenosine A₁レセプタ-刺激説（ATP-感受性K^＋チャンネル開口を介する機序も含めて）が有力である．