Japanese
English
特集 Ischemic Preconditioningと心筋保護
臨床におけるIschemic Preconditioning
Clinical Ischemic Preconditioning in Myocardial Infarction
藤 久和
1
,
南野 隆三
1
Hisakazu Fuji
1
,
Takazo Minamino
1
1桜橋渡辺病院循環器科
1Department of Cardiovascular, Sakurabashi Watanabe Hospital
pp.239-243
発行日 1994年3月15日
Published Date 1994/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900828
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緒言
急性心筋梗塞の病態,予後を左右する主要因子として梗塞量の大きさ,梗塞の既往歴,冠血管病変と再疎通の有無,ならびに心機能障害の程度などが知られている.従来より,梗塞前に狭心症のある症例では梗塞前狭心症のない症例に比し心筋梗塞の梗塞量が小さいことが報告されており,その機序として,これまで狭心症の存在する症例では側副血行路の発達しているためと考えられてきた1〜4).しかしながら,再灌流療法が普及して急性期血管造影が施行されるようになり,良好な側副血行路を認めないにもかかわらず梗塞量の小さい心筋梗塞の症例は稀でなく,その機序の解明は今日の急性心筋梗塞の興味あるテーマのひとつである.
一方,Jenningsら5)は数回の短時間虚血により心筋組織が虚血に対する耐性を獲得し,梗塞量1/3〜1/4と著明に縮小することを動物実験モデルにおいて実証し,この現象をischemic precon—ditioningと命名した.本現象は虚血時間や側副血行といった従来から知られている梗塞量規定因子とは全く異なる新しい因子として注目され,梗塞量縮小の機序,preconditioning刺激の条件など種々の検討が実験モデルでなされた6〜9).
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