連載 Dr.長坂の身体所見でアプローチする呼吸器診療・7
肺の聴診1〜肺音とは〜(呼吸音と連続性雑音)
長坂 行雄
1
1洛和会音羽病院 洛和会京都呼吸器センター
pp.1207-1213
発行日 2016年12月15日
Published Date 2016/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404206084
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2016年は,ラエンネック*1が肺の聴診を発明してからちょうど200年目になる.彼の記述は正確で現在の分類とほぼ同じである.しかし,肺聴診の普及はまだ十分でない.要因の一つは用語で,ラエンネックがフランス語で記載した用語がドイツ,英国,米国で多様に翻訳され多様に日本に伝わった.このため,わが国では用語の統一が難しかった.しかし,三上らが国際的なコンセンサスを作成し,工藤らの歴史を踏まえた提案(図1)で,用語も統一されつつある1).われわれは,この提案を踏まえ,ウィーズ(wheezes),ロンカイ(rhonchi),クラックル(crackles)のようにラ音のカタカナ表記を推奨している.これにより,コメディカルとカルテも共有しやすく,英語では複数形で書かれる用語を日本語ではどうするか,などの問題もなくなる.
肺聴診が普及するうえでの,もう一つの問題は,肺音の数値化と画像化が難しかったことである.40年ほど前,心音図のように肺音図が広まらなかった.肺音は周波数が高く1秒の肺音の記録紙が何mにもなり,普及は困難であった.最近ではデジタル解析が普及して,肺音を聴き,肺音図=サウンド・スペクトログラム(図2)を見ながら学習までできる1〜5).聴診は,肺の状態をその場で判断できる便利な診療技術である.近年,心音の情報の多くが心エコーで代用されるが,肺音では,このような代用手段はない.
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