連載 Dr.長坂の身体所見でアプローチする呼吸器診療・8
—肺の聴診②—断続性雑音と胸膜摩擦音
長坂 行雄
1,2
1洛和会音羽病院
2洛和会京都呼吸器センター
pp.354-359
発行日 2017年5月1日
Published Date 2017/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200044
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ラ音は肺から発生する副雑音で,断続性ラ音(クラックル)と連続性ラ音(ウィーズ)がある.クラックルは,肺炎や肺水腫で聴かれるコース・クラックル(coarse crackles)と,間質性肺炎でよく聴かれるファイン・クラックル(fine crackles)に分けられる.コース・クラックルは粗い感じのクラックル音で,吸気の始まりから聴かれ,ファイン・クラックルは吸気の後半によく聴かれる.しかし,クラックルの音質も聴かれるタイミングも病状によって変化していく.クラックルは,経過を診るのにも有用な所見だが,小さな音で聴き逃すことが意外に多い.ノイズと区別しにくいこともある.胸膜摩擦音もクラックルと紛らわしい音だが,聴こえる状況は限られている.
クラックルの聴こえるときは胸部X線陰影を認めることが多く,気管支喘息のようにウィーズが聴かれる病態では肺野に陰影を認めないのと対照的である.クラックルは,さらにX線画像よりも早く,自覚症状と同じような時間経過で変化していく.患者の訴えは医師からみると,過小であったり,過大であったりすることがある.クラックルの変化はそのような病状の変化を客観的にとらえる優れた身体所見である.しかし,診療で使うには知識とコツが必要である.
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