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綜説
超高齢化時代における市中発症肺炎の疫学と課題—APSG-J研究から学んだこと
Community-onset Pneumonia in a Highly Aging Society:Lessons Learned from APSG-J Study
森本 浩之輔
1
,
鈴木 基
1
Konosuke Morimoto
1
,
Motoi Suzuki
1
1長崎大学熱帯医学研究所臨床感染症学分野/長崎大学病院感染症内科
1Institute of Tropical Medicine, Department of Clinical Medicine, Nagasaki University
pp.917-921
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404206033
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はじめに
急性下気道感染症は,世界の死亡原因のなかでも重要であり,最新の推定によると第4位に位置している.肺炎は高齢になるほどに発生頻度が増すことから,今後世界的な高齢化によりグローバルヘルス上の主要な問題となるとされる1).なかでも日本では全人口の25%が65歳以上となり,世界でも経験のない超高齢化時代を迎えている.厚生労働省が発表する人口動態統計においては,2012年,死亡原因としての肺炎は脳血管障害を抜いて3位となり,その死亡の95%超は65歳以上におけるものであった.肺炎は高齢化社会の医療,福祉においては最も重要な疾病の一つである.
高齢者の肺炎においては,その多様性が特徴であり解決に向けての課題を複雑にしている.すなわち重症度に加え,細菌,ウイルスなどの起炎微生物が多岐にわたること,基礎疾患,虚弱度の差異に加え誤嚥性肺炎が多いことなど,その臨床像は極めて多様である.したがって,成人肺炎に対しては客観的なデータの検証により,緻密で積極的な医療・保健政策の構築が必要であるといえる.しかしながら,日本においては,そのために必要な疫学データが十分に共有されているとはいえない状況であった.
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