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特集 Onco-Cardiology—がんと循環器における新しい関係
がん治療における心毒性—血栓塞栓症:がんと血栓の関係について—がんによる血栓形成のメカニズムならびに化学療法に伴う血栓症
Cardiovascular Toxicity of Cancer Therapy:Indispensable Linkage between Cancer and Thrombosis Mechanisms of Thrombosis in Cancer, and Chemotherapy-induced Thrombosis
窓岩 清治
1
Seiji Madoiwa
1
1東京都済生会中央病院臨床検査医学科
1Department of Clinical Laboratory Medicine, Tokyo Saiseikai Central Hospital
pp.867-874
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404206026
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はじめに
がんはRudolf Virchowのいう「治癒することのない創傷」であり,その増殖や浸潤過程で生体防御反応を担う血小板・凝固線溶系を巧みに利用する.がんと血栓症との関係は,1823年にフランス人内科医Jean Baptiste Bouillaudが「がん患者にみられる下肢の『浮腫』は,生じたフィブリン血栓により静脈が閉塞したためである」と記述したものが最初であろう1).その約40年後,Armand Trousseauは胃がん患者に併発する“Phlegmasia alba dolens”(移行性血栓性静脈炎)を報告した後に,自らが膵臓がんに罹患しその血液が凝固亢進状態にあることを示した.下肢深部静脈血栓症を併発し死亡したというアイロニーが今日においても強く印象付けられている2).
がん患者における静脈血栓塞栓症の発症率は1〜8%であり,健常人の約4〜7倍も高い3).また静脈血栓塞栓症の20〜30%は,がんに関連するものである4).がん患者の血栓塞栓症による死亡はがん死に次いで高く,生命予後に大きな影響を及ぼす5).本稿ではがんによる血栓形成メカニズムと,化学療法に伴う血栓症について概説する.
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