Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
肺高血圧症治療をグローバルな視点からみると,この2〜3年の変革は大きなものとなっている.従来は2005年にHoeperらが行った報告から1),運動耐容能の改善を治療の目標におき,その目標を達成できない場合には併用療法を進めていくという治療戦略をGoal Oriented Therapyと呼び,主として運動耐容能で評価した治療のゴール(Treatment Goal)というものが強く意識されてきた.運動耐容能ひいては6分間歩行距離の改善が肺高血圧症治療薬の開発や予後の寄与に改善したことは紛れもない事実である.これは希少疾患である肺高血圧症の治療薬開発において,ほとんど薬剤がない時代に死亡や入院などのいわゆるHard Endpointを設定することは,薬剤開発まで多大な時間を要することを意味するため,倫理的側面からもしかるべき措置であったといえる.しかし薬剤が充実してきた現在では,臨床試験の短期効果の指標としての6分間歩行距離の改善は必ずしも長期予後を反映するものではないこと2)から,昨今では死亡や肺移植の施行および心不全による入院や症状の悪化に伴う薬剤の増量などをエンドポイントと定義する“Time to Clinical Worsening(TTCW)”という概念が臨床試験のエンドポイントとしても使用されるようになっている.また,後述するように併用療法に関してもエビデンスが整ってきたことから,早期併用療法が積極的に推奨されるようにガイドラインの変更も行われている3,4).
そこで本稿では,現在使用されている肺高血圧症治療薬における併用療法のエビデンスを紹介するとともに,今後の世界の潮流となる治療を先取りして行っていた本邦において,併用療法を用いた治療戦術に関してレジストリーから俯瞰した解説を行う.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.