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概念・診断
門脈圧亢進症に伴う肺高血圧症(門脈肺高血圧症,portopulmonary hypertention;POPH)は,肝硬変などの肝疾患によって門脈圧亢進を来した患者に合併する肺動脈性肺高血圧症(PAH)である.中等度以上のPAHを放置したまま肝移植を行った場合に死亡率が非常に高かったことから,その重要性が認識されるようになった1).病理組織所見は,特発性肺動脈性肺高血圧症の所見と同様で,肺動脈の血管内皮細胞の増殖と平滑筋細胞の肥大,内部の血栓形成を認めており,2008年のダナポイント分類ではPAHのなかの「他の疾患に関連するもの(associated PAH;APAH)」の一つとして分類されている.
門脈圧亢進症に平均肺動脈圧25mmHg以上で定義される肺高血圧症(PH)を合併する原因としては,主に①門脈圧亢進症によるシャント血流に伴う高心拍出状態(“high flow”の状態)と,②左心不全や腎不全に起因する肺静脈のうっ血,および③肺動脈の血管内皮細胞の増殖と平滑筋細胞の肥大による器質的な狭窄・閉塞を伴うPAHがあるが,右心不全や死亡に主に関わってくる病態は3つ目のPAHを来しているものであり,これがPOPHと定義されている2).これらの病態を鑑別するため,2004年に改訂されたヨーロッパ呼吸器学会(ERS)の診断基準では,門脈圧亢進症の患者において平均肺動脈圧が25mmHg以上,肺動脈楔入圧が15mmHg未満であることに加え,表1のように肺血管抵抗が240dynes・sec・cm-5以上であることを含めて定めている3).肺血管抵抗が正常,もしくは低下している場合には,シャント血流に伴う高心拍出状態を考える.
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