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は じ め に
科学研究は,従来型の仮説駆動型からデータ駆動型へのパラダイムシフトが起きている.これまでの仮説を証明するために情報収集や実験を行うという研究スタイルから,網羅的に大量の情報を収集しデータベース化し,そこからデータマイニング,すなわち必要なデータの抽出や規則・現象の発見を行うという研究スタイルに変化してきている.エビデンスに基づいた医療(EBM)を実現するためのレベルの高いエビデンスは,無作為化比較試験(RCT)とそのメタアナリシスにより得られてきたが,厳格な症例の選択基準が適応されてしまうと,さまざまな患者背景をもつ疾患ではRCTの結果を必ずしも臨床に実装できなくなる問題点もある.
レジストリー研究は大規模ないわゆるリアルワールドデータを用いてエビデンスを構築する手法の一つとして最近注目されている1).本邦の臨床医学・医療の現場でもこの流れは同様で,厚生労働省は医療の質の向上や費用対効果をふまえた良質な診療方法の選択に資する大規模データベース(ナショナルレジストリー)の整備を国策として推進している.医療情報データベース構築の目的は,① 医学研究:医療ビッグデータを利用した多施設大規模研究の実施,② 政策対応:診療報酬対策,新規医療技術の開発,製造販売後調査への対応,③ 専門医制度への対応などである.
整形外科領域におけるレジストリーは北欧を中心としたヨーロッパで長い歴史があり,人工関節,脊椎手術などに関する数多くの質の高い臨床研究が報告されている2,3).わが国でも2003年から日本整形外科学会(日整会)インプラント委員会が中心となり人工関節のレジストリー構築が検討され,2006年にパイロット研究が開始された.2011年からは日本人工関節学会に運営が移行され,最近登録率も向上している4).
本項では,わが国および海外での整形外科領域でのレジストリーの現状と臨床研究への応用について概説する.
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