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特集 人工関節のレジストリー
レジストリーデータの活用
-―metal on metal total hip arthroplasty―
Practical use of registry data for metal on metal total hip arthroplasty
名越 智
1
Satoshi NAGOYA
1
1札幌医科大学,生体工学運動器治療開発講座
キーワード:
Registry data
,
Metal on metal
,
Total hip arthroplasty
Keyword:
Registry data
,
Metal on metal
,
Total hip arthroplasty
pp.391-401
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.18888/se.0000000410
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要旨:人工股関節置換術(THA)のレジストリーの役割は,多数の臨床例の集積データを用いた臨床成績や機種の分析情報を整形外科医にフィードバックすることである。その中には,比較的早期の再置換術率の高さから使用が控えられるようになった金属対金属の摺動面をもつ通常型のTHA(metal on metal[MoM]conventional THA)がある。オーストラリアや英国のレジストリーにおいてMoM THAは術後約14年間で,累積再置換術率は約20%であり,再置換の原因は金属関連の病態が42%,緩み・骨溶解が28%,感染が11%であった。最も関連のあった要因は骨頭径で,32mmを超える大径骨頭では再置換術率が上昇していた。MoM通常型THAはMoM表面置換術と同様の摺動面を持つが,両者の違いはステムネックと骨頭間における金属同士の接触部の有無である。ステムtrunnionと金属骨頭間で生じる金属関連の不具合はtrunnionosisといわれ,金属腐食からの金属イオン・摩耗粉が組織壊死を生じ,MoM THAの不具合の主因と考えられている。金属対金属人工股関節置換術における不具合を掲載した人工股関節レジストリーに端を発し,徐々に解明されてきた金属人工骨頭とネック間に生じた重篤な合併症はMoMのみでなくMoPのTHAにおいても生じる可能性がある。予想だにしなかったTHAにおけるこれらの合併症は,今後のTHAにも未知の不具合とこれに対する確かな診断,早い対処をわれわれに求めているアラートなのかもしれない。
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