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はじめに
HIV-1(human immunodeficiency virus-1)は1983年に初めて分離されたプラス鎖の一本鎖RNAウイルスで,RNAからDNAを作る逆転写酵素(reverse transcriptase;RT),蛋白分解酵素(protease, pro),構造蛋白質(group specific antigen;gag),殻であるenv(gp160として合成され,gp120とgp41になる),転写活性因子(transactivator;tat)などを発現する.HIVの主なターゲットはCD4陽性Tリンパ球,単球の系統であり,最終的には後天性免疫不全症候群(acquired immune deficiency syndrome;AIDS)を引き起こし,感染症により死に至る.
全世界のHIV感染は年々増加し,感染者3,700万人,15歳以下が260万人,1年間新規感染者が200万人,うち15歳以下が22万人,成人有病率0.8%,死亡者数が120万人となっている.治療としては,1,500万人(全体の41%)が抗レトロウイルス療法(antiretroviral therapy;ART)を受けている.地政学的にはサハラ以南のアフリカ(Sub-Saharan Africa;SSA)において人口は全世界の12%であるのにもかかわらず,全世界の感染者の69%の2,580万人,子供に限れば90%を占め,成人の有病率は4.9%に達し,女性が58%を占め,毎年140万人が新たに感染し,79万人が死亡(全世界の66%)している1).アメリカ合衆国では,110万人が感染し,20%以上が女性,18.1%が不顕性感染であり,毎年5万人が感染し,その31%が25〜34歳,26%が13〜24歳である.
ARTの導入と改善が進み,免疫不全状態がコントロールされ,寿命が延長するとともに,循環器疾患,高血圧,腎臓病,骨疾患,悪性腫瘍などの慢性疾患が問題になってきた(図1)2).HIVに関連する循環器疾患として,心筋症,心筋炎,肺高血圧,心不全,刺激伝導系の障害,悪性腫瘍の浸潤などがあるが,ART以後の先進国では,冠動脈疾患が目立つようになってきた3).
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