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特集 呼吸器疾患における慢性炎症を考える
薬剤性肺障害,特発性肺線維症急性増悪の遺伝的素因に関する検索
Investigation on the Genetic Factor(s) for the Drug-induced Pneumonitis and the Acute Exacerbation of the Idiopathic Interstitial Fibrosis
萩原 弘一
1
Koichi Hagiwara
1
1自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学第1講座
1Conprehensive Medicine 1, Saitama Medical Center, Jichi Medical University
pp.144-148
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205900
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はじめに
薬剤性肺障害は様々な病形をとる.そのうち,重篤であり臨床的に最も問題になるのはびまん性肺胞障害を示すものである.どの薬剤でも,惹起する炎症が激烈になれば,その結果としてびまん性肺胞障害になりうる.しかし,一部の薬剤性肺障害,特にゲフィチニブ,エルロチニブなどEGFR-TKI(epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitor)により引き起こされるものは,弱い炎症から激烈な炎症という段階を踏まず,まったく炎症の存在しない肺の上に,突如激烈な炎症が発生することがしばしばである.弱い炎症が引き金になるなら,ステロイドの予防的投与,または発症初期の免疫抑制剤投与などが有効と考えられるが,これらの方策が有効という明確な報告はない.
特発性肺線維症では,慢性的に進行する破壊性の病態が一変し,突然急性のびまん性肺胞障害が生じる.この病態の変化を急性増悪と称する.特発性肺線維症の慢性期には,上皮障害と肺構造の改変が認められる.同時に,リンパ球浸潤などの炎症性変化が存在する.この状態に感染などわずかなきっかけが加わることで急性増悪が発症する.急性増悪発症にも,ステロイドの予防的投与などの予防策が有効という明確な報告はない.
ゲフィチニブの薬剤性肺障害,特発性肺線維症急性増悪は,まったく異なる背景疾患に生じるびまん性肺胞障害である.しかし,両者の発症頻度に奇妙な民族差があることが次第に明らかになってきた.それを説明しようとすると,両者の原因は同一なのではないか,という仮説が出てくる.本稿は,その仮説をめぐるものである.
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