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特発性肺線維症の病態・治療の変遷
特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)は,慢性進行性の経過をたどり,高度の線維化が進行し不可逆性の蜂巣肺形成を来す予後不良の難治性疾患であり,診断時からの平均生存期間が3~5年である1).その病態は,主に肺胞隔壁を炎症・線維化病変の場とする間質性肺炎のうち,原因が特定できない特発性間質性肺炎(IIPs;idiopathic interstitial pneumonias)の病型の一つがIPFであり,最も頻度が高く,かつ予後不良の疾患群である.ATS/ERSのIIPsの国際分類が2013年に改訂され,Major IIPsとしてIPF,idiopathic nonspecific interstitial pneumonia(idiopathic NSIP),respiratory bronchiolitis interstitial lung disease(RB-ILD),desquamative interstitial pneumonia(DIP),cryptogenic organizing pneumonia(COP),acute interstitial pneumonia(AIP)の6病型が,rare IIPsとしてidiopathic lymphoid interstitial pneumonia(LIP),idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE),そして分類不能のunclassifiable IIPsと計9病型に分類された2).この9病型の一つがIPFであり,最も頻度が高く,かつ予後不良の疾患群である.IPFの原因は不明であるが,種々の外因的,あるいは内因的刺激により肺胞上皮または基底膜が傷害され,その修復過程における線維芽細胞の増殖,細胞外マトリックスの過増生により線維化病変が形成され,肺の硬化により機能障害が引き起こされる1).IPFの治療薬として,抗炎症作用のみならず,慢性進行性の線維化を抑制する薬剤が望まれ,線維化が顕著となる以前からの疾病早期からの治療導入が必要であると考えられるようになっている(図1).2000年のATS/ERSのガイドライン3)では,ステロイドと免疫抑制薬が暫定的に推奨治療とされてきたが,治療の主眼が抗炎症から抗線維化へパラダイムシフトし,近年,抗線維化作用を有するピルフェニドン(pirfenidone;PFD)や抗酸化作用を有するN-アセチルシステイン(NAC)などの抗線維化薬が治療薬の中心となってきている.2011年にATS/ERS/JRS/ALATのIPFガイドラインが発表され,そのなかでも種々の新薬の臨床試験が紹介され,推奨治療が示されている4).現在まで,IPFの臨床試験で主要評価項目に対する有効性が示されている薬剤はPFDのみである.PFDは日本と欧州でその有効性が確認された5~7).日本においてPFDは2008年に世界に先駆けてIPFに対して保険適応が認められ,最近では欧州に続き韓国でも販売承認されている.一方,NACはプレドニゾロンとアザチオプリンとの併用投与で欧州において有効性が確認されたが8),その後のPANTHER-IPF試験において,3剤併用療法の有効性が否定され9),NAC単独投与の効果が検証されている.わが国では早期IPFに対してネブライザーによるNAC単独吸入療法が有効な群が存在することが明らかになった10).最近のコクランレビューの更新で,IPFにおけるコルチコステロイドの有効性を裏付ける新たなエビデンスは確認されていない.PFDにおいては,第Ⅲ相試験3件のメタ解析により,無増悪生存期間の有意な延長が示唆されている.これらの臨床試験やメタ解析の結果を受けこれまで有効な治療がなかったIPFの治療は日々変化している.
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