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はじめに
わが国の難病対策である難治性疾患克服研究事業における臨床調査研究分野の対象疾患(130疾患)の一つである特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias;IIPs)は,難病患者の医療費助成制度である特定疾患治療研究事業の対象疾患(56疾患)にも含まれている.特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)はIIPsの臨床病理学的疾患単位の一つで,最も頻度が高い.IPFの自然経過は個々の症例により様々であるが(図1),一般的には慢性経過で肺の線維化が進行し,不可逆的な蜂巣肺形成を来す予後不良な疾患である1,2).平均生存期間は,欧米の報告では診断確定から28~52カ月,わが国の報告では初診時から61カ月であるが,患者間での差が大きい2).現時点においてIPFの生存率に対する有効性を証明した薬物療法はなく,2000年に発表されたATS/ERSのinternational consensus statement3)で暫定的な推奨治療とされた副腎皮質ステロイド薬とシクロホスファミドやアザチオプリンなどの免疫抑制薬との併用療法においても生存期間の改善は困難である4).図2にIPFに対する新たな治療戦略を示す5).最近の大規模臨床試験の結果からN-アセチルシステイン(NAC)やピルフェニドンが注目されており6~8),新たな抗線維化薬としてBIBF1120の臨床試験も進行中である9).
また,IPFの慢性経過中に両肺の新たなすりガラス陰影・浸潤影の出現とともに急速に呼吸不全の進行を認める急性増悪は,IPFの予後規定因子の一つであるが,明らかに有効といえる薬物療法は確立されていない.ステロイドパルス療法や免疫抑制薬,顆粒球エラスターゼ阻害薬,抗凝固薬(低分子ヘパリンなど)などが経験的に用いられるが,初回急性増悪での死亡率は約80%で,改善例でも平均6カ月で死亡するとされている2).近年新たな治療法として,わが国の複数の施設からポリミキシンB固定化カラムによる血液浄化(PMX)療法の有効症例が報告されている10,11).
本稿では,IPFに対する新たな治療戦略について,難治性疾患克服研究事業の一つであるびまん性肺疾患に関する調査研究班が行ってきたいくつかの調査研究結果を含むこれまでのエビデンスおよび今後の課題を中心に解説する.
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