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特集 わが国における脳・心血管疾患予防のための疫学研究
吹田研究
The Suita Study
渡邉 至
1
,
宮本 恵宏
1
Makoto Watanabe
1
,
Yoshihiro Miyamoto
1
1国立循環器病研究センター予防健診部
1Department of Preventive Cardiology, National Cerebral and Cardiovascular Center
pp.29-36
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205880
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吹田研究の特徴
吹田市は人口が約365,000人(平成27年8月現在),面積は約36km2で,人口密度約10,000人/km2の大阪市北側に隣接した都市であり,全市域が人口集中地区(市区町村で人口密度が4,000人/km2以上の基本単位区が隣接し,人口5,000人以上となる地区)に該当する.吹田研究とは国立循環器病研究センターが中心となり吹田市および吹田市医師会の協力を得ながら吹田市住民を対象に実施しているコホート(追跡)研究のことで,循環器疾患の発症をメインアウトカムとしている.
わが国における地域住民を対象としたコホート研究のほとんどは,人口移動が少なく,目的とする疾病の発症者の把握も比較的容易な単独(または少数)の農村地域の市町村で実施されているが,現在,わが国の人口の約3分の2が都市部を中心にした人口密度の高い地区に居住していること,急速に生活習慣が欧米化しつつあることを考慮すると,農村地域からの研究結果だけでは,日本全体の状況を反映した予防対策を立案するのに十分でない可能性がある.都市部と農村地域の両方の研究結果が互いに補完し合いながら,わが国の健康医療施策に貢献することが理想的であるが,人口移動が激しく,医療機関も多数の選択肢がある都市部でコホート研究を実施,継続することは,循環器疾患をはじめとした公的な疾病登録制度の整備が遅れている日本において,多くの困難を伴う.そのような状況において,吹田研究は1989年から約25年間継続されてきたわが国で唯一の都市部での循環器疾患を対象としたコホート研究である.
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