Japanese
English
Bedside Teaching
動脈硬化と腸内細菌
Gut Microbiota and Atherosclerosis
江本 拓央
1
,
山下 智也
1
,
平田 健一
1
Takuo Emoto
1
,
Tomoya Yamashita
1
,
Ken-ichi Hirata
1
1神戸大学大学院医学研究科内科学講座循環器内科学分野
1Division of Cardiovascular Medicine, Department of Internal Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine
pp.1209-1215
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205865
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はじめに
ヒトの腸管には約500〜1,000種類,100兆個以上の腸内細菌が生息し,食物繊維などヒトの持つ酵素では分解できない物質を代謝していることが報告されている.また,アミノ酸,ビタミン,脂肪酸の一部も腸内細菌叢によって合成される.腸内細菌叢の研究は,従来は菌を培養することでしか菌種の同定ができなかったが,ヒトの腸内細菌叢のほとんどは難培養偏性嫌気性菌であり,その一部しか同定できなかった歴史的背景がある.この問題を克服したのは分子生物学・遺伝子工学の発展によるところが大きく,細菌固有の16SリボソームRNA遺伝子という細菌の分類に使用される遺伝子配列を調べることで,細菌種を同定できる技術が開発された.また,次世代シークエンサーの登場で網羅的に全腸内細菌遺伝子の解析を行うことができるようになったことにより,この10年で飛躍的に腸内細菌の分類研究が発展した.腸内細菌が,腸の疾患である炎症性腸疾患はもちろん,肥満や糖尿病などの代謝性疾患発症に関係することが相次いで報告され,腸内細菌叢が様々な疾患の危険因子となる可能性や治療のターゲットとなる可能性について積極的に研究がなされている.本稿では,腸内細菌叢と動脈硬化の関連性について,今までの報告を紹介しながら,今後の展望を考えてみたい.
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