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はじめに
システィニルロイコトリエン(cysLTs)は,種々の刺激により細胞膜から切り出されたアラキドン酸を出発原料とし,5-リポキシゲナーゼにより酵素的に産生されるLTC4,LTD4ならびにLTE4の総称である.アレルギー反応においてはIgE依存性に主として肥満細胞から産生されるため,古くからアレルギーの研究において注目されてきた.cysLTsは,ヒト気道平滑筋収縮においてヒスタミンに比し強力な収縮作用を有するメディエーターである.また,cysLTsは気道収縮反応以外にも,好酸球性気道炎症の誘発,気道過敏性,血管透過性亢進,気道リモデリング形成など,喘息病態形成において極めて重要な役割を有している.
cysLTsの受容体は,現在,cysLT1型受容体(cysLT1R),cysLT2RならびにGPR99が知られている(表1).ヒトではcysLT1Rには3種のcysLTsのうちLTD4が最も親和性が高く,cysLT2RにはLTC4とLTD4の親和性が同等であることが知られている1).これに対し,近年,両受容体遺伝子欠損マウスを用いた検討から第3の受容体の存在が推察され2),その後,GPR99がLTE4の受容体として同定された3).
CysLT1R拮抗薬が本邦で開発・上市され,既に10年余りが経過した.この間,同効薬の上市が相次ぎ,これらの薬剤を使用した基礎および臨床研究によりcysLTsならびにcysLT1Rの新たな役割が解明されてきた.一方,cysLT2Rについては選択的な受容体拮抗薬が開発されていないことから,その役割は不明である.筆者らは,近年,選択的cysLT2R拮抗薬を用いて,モルモット喘息モデルならびにマウス喘息モデルを用いてcysLT2Rの意義を解析した.本稿では,これら動物モデルから得られた成績を紹介し,cysLT2の喘息病態形成,症状発現ならびに治療標的としての意義について議論したい.
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