書評
—小船井光太郎,渡辺弘之 監訳—症例でつかむ心不全
猪又 孝元
1
1北里大学医学部循環器内科学
pp.879
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205787
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カテーテル診療の領域で一世を風靡し,現場を席巻し続けるライブデモンストレーション.あの興奮を心不全の世界でも表現できないか—この10年,わたし個人の目標のひとつであった.ライブは,なぜ興奮するのか.それは,多岐にわたる病変ごとに,神の手たちが論理立てて最善策を提示し,それを実現していくからである.キーワードは,バリエーションへの対応,tailor-made therapyというやつである.
心不全は多種多様な症候群である,とは教科書の常套句である.ならば,心不全の世界こそ,ライブの熱狂に似つかわしい.心不全診療の極意は,症例検討でしか表現できない.脚本書きこそ醍醐味である.今や,診断や治療における道具立ては数知れない.エビデンスに基づいた診療(EBM)が半ば常識化した現在,有効だとする根拠なしに,道具が現場に登場することはない.しかし,統計学上の有意差やハザード比が,診療全体のなかで重み付けを決めるとは限らない.多くの道具をどう取捨選択し,どの順番でどう診療フローを組み立てるか,いくら論文を読みこんでもなかなか回答は得られない.「臨床シナリオ」を語る時代が到来したのである.
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