東西詞華集
花河—神保 光太郎
長谷川 泉
pp.45-46
発行日 1953年3月10日
Published Date 1953/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200477
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神保光太郎の中には,単に普通の抒情詩人のなかには感じられないような強靱な骨格がある。それは,彼が詩人としての詩作のほかに大学教授もつとめ,詩論も書き,ドイツ文学の飜訳もあるところからくるのでもあろうか。抒情のなかに重く沈んでいる調べは,冷徹な哲学的思惟といつたようなものではないにしても,うわつつらな人生を送つたのでは,またひとときの感傷や感情のあふれからは生み出され得ないものを包蔵している。たしかに重く沈んだ抒情は神保の詩を特色づけるものである。
彼は,一時,保田与重郎等と共に「日本浪漫派」に属していた。しかし神保のなかにある骨格が,日本浪漫派と同じ色彩のなかに並べられた時があつたにしても,この派と同調したと見る事は出来ないであろう。同じくドイツ文学を修めても芳賀檀などにくらべるならば,彼は本質的に詩人であり,詩人であるが故の外道にはしらなかつたと言える。
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