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はじめに
カテコールアミン,アセチルコリン以外に自律神経の神経伝達物質としてsubstance P (SP)1)や,vasoactiveintestinal polypeptide (VIP)2)が存在することが報告されてから10年以上の年月が経た。その間に,calci-tonin gene-related peptide (CGRP)3),neurokinin Aand B (NKA, NKB)4)のような新しいペプタイドが次々と構造決定され,非アドレナリン作動性非コリン作動性神経(NANC神経)の神経伝達物質として同定されつつある。また,1988年にブタ血管内皮細胞培養上清中に発見されたendothelin5)も強力な気道平滑筋収縮活性を有していることが報告され6),今後肺での生理作用が明らかにされてゆくものと考えられる。今回,SP,NKA等のtachykinin類,CGRP,VIPについてモルモット気管平滑筋,肺実質標本を用いた薬理学的検討,また,それぞれのペプタイドに対しての特異的抗体を用いての免疫組織学的検討結果について報告する。
NANC神経はnon-adrenergic non-cholinergicの名が示すように,アドレナリンまたはアセチルコリンでは説明しえない自律神経の総称として付けられた名称であり,おそらくは将来tachykinin作動性神経,VIP作動性神経というような個々の作動伝達物質名をつけた名称を使用する時期が来るものと思われる。しかし,最近明らかにされつつある事実としてアセチルコリンとVIPが同一線維に存在していたり7),また,SP,NKA,CGRPが共存しているという報告8)のように1つの神経線維に2つ以上の物質が存在している可能性が高くなってきた。しかし,共存している神経伝達物質は,VIPとアセチルコリン,NKAとCGRPのように薬理学的に全く正反対の作用を有している場合もあり,どのような刺激で伝達物質が放出される仕組みになっているか興味深く、個々の神経における神経伝達物質の局在が明らかになる時期までNANC神経の分類は難題かもしれない。
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