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咳は呼吸器疾患患者を診療する際に遭遇する,最も頻度の高い徴候の一つである。また,治療も一見簡単なようであるが,中には単純な上気道感染後に咳だけが長期間続く例や,咳により基礎にある呼吸不全が増悪する例などが,日常よくみうけられる。
咳の発生機序に関しては古くから研究されている。殊に,咳刺激が中枢神経を通って、標的器官(声帯,横隔膜等)に到達後に起きる一連の機械的変化に関する検討は充分になされている1)。しかし,咳刺激を電気的信号に変換する部位,いわゆる咳受容体の構造および機能に関しては仮説の域を出ない。Paintalによると,圧またはひずみを感知するmechano-receptorと化学物質を感知するchemical receptorが存在するとされている。神経線維近位側に膜状にchemical receptorが存在し,それより紐状にmechano-receptorが突出していると考えられており,毛根にあって触覚を感知するMerkel細胞—軸索複合体に類似した構造ではないかと想像されている。mechano-receptorは気道収縮などにより,またchemical-receptorはヒスタミン等の化学物質に反応する。阻害剤としては,種々の麻酔薬がchemical recep-tor上で咳刺激を阻止することが知られているが,詳細は不明である2)。咳受容体からは主に有髄線維をへて中枢に刺激が上行すると考えられているが3),最近では無髄線維であるC線維を介する反射も考慮されている4)。従来より,外来性に与えたヒスタミン5),ブラディキニン6),プロスタグランジンE1,E2,F2α7),そしてプロスタグランジンD28)が咳を生ずることが知られている。
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