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I.睡眠の生理
大昔から,睡眠は,不可解な生体現象として,人を魅惑し,恐れさせ,困惑させてきた。この状態は,脳波や筋電図,呼吸などの終夜のモニターができるようになった現在でも,依然として変わっていない。そしていまだに「明解に全ての人に満足してもらえる定義」さえ不可能な状態である。Kleitman1)は「睡眠は,健康な成人の通常の生活様式である覚醒状態の周期的な一時的停止または中絶とみなされる。睡眠を短い言葉で定義することは困難であるが,睡眠の特徴は,ほとんど完全な運動の消失と一般感覚の鈍麻,反射に対する刺激感受性の閾値の増大によって特徴づけられる感覚運動性活動の停止である。そして,この活動の停止は外部の条件によるものではなく,内部の必要によるもので,これが,植物および動物の環境の影響による一時的な不活動状態と睡眠とを区別するものである。さらに睡眠は覚醒しうる能力を持っているということで,他の多くの睡眠様状態,例えば昏睡,麻酔などから区別し得るものである」と述べている。
この睡眠状態は,現在ではREM睡眠とNon-REM(NREM)睡眠に分類され,NREM睡眠は浅い睡眠から深い睡眠へと4つのstage (1,2,3,4,)に分けられている2)。通常は入眠とともにstage 1から2,3,4と通過し,stage 2にかえり,ついで10〜30分のREM睡眠が続いて1つの睡眠周期が終わる。1睡眠周期は,およそ90分(70〜120分)で1夜の内に3〜4回くり返す。夢はREM期でも,NREMでも見るが,REM期の夢のほうが生き生きしていると言う。REM睡眠やNREM睡眠がどのような神経機序でおこるかはまだ明らかにされていない点が多いが,REM睡眠はNREM睡眠に比べて,1)脳波が浅眠時のそれに類似し,大脳の活動水準は覚醒期に近い,2)急速な眼球運動が頻繁に現れる,stage of rapid eye movement (REM)と言われる由縁である。3)身体の姿勢を保つ抗重力筋の緊張が著しく低下している。4)入眠後NREMを経て出現する。5)心拍数や呼吸,血圧などの自立神経系統の変動が激しい。6)眠っている人をこの時期に覚醒さすと80%は夢を見ていたと答える。などの特徴がある。
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