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■睡眠呼吸障害をめぐる最近1年間の話題
睡眠呼吸障害の最近1年間の最大の話題としてはナルコレプシーの原因遺伝子の同定が挙げられる.1998年に独自に二つのグループが神経ペプチドで食欲に関与する因子としてオレキシン(orexin)1)とヒポクレチン(hypocretin)2)を発見したが,これらは同一物質であった.オレキシンを同定したYanagisawaらのグループは,昨年,オレキシンをノックアウトしたマウスがヒトや,遺伝的にナルコレプシーを発現する犬のナルコレプシーと同様に,脱力発作とそれに続くREM睡眠を示すことを,脳波電極を埋め込んだノックアウトマウスを24時間ビデオにて観察することによって発見した3).また,スタンフォード大学のグループは,Yanagisawaグループとは別個に遺伝的にナルコレプシー様の症状を示すドーベルマン犬の異常はヒポクレチン(オレキシン)受容体2の異常であることを明らかにした4).また,脳脊髄液中のヒポクレチン濃度は正常人では280pg/ml程度であったが,ナルコレプシー患者9名中7名においては感度以下の40pg/ml以下であった5).神経ペプチド,オレキシン(ヒポクレチン)の研究によりナルコレプシー治療の道が開かれた.また,主に脂肪細胞から分泌され,食欲を抑制し,代謝活動に重要な影響を与えるレプチンが肥満マウスの呼吸抑制を防御すると報告された6).閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructivesleep apnea syndrome:OSAS)患者の早朝の血清レプチン濃度は経鼻持続気道陽圧(nasal con—tinuous positive airway pressure:nCPAP)治療後に有意に低下することも明らかになった7).代謝活動に重要な影響を与える液性物質8)が呼吸に重要な影響を与え,睡眠時の呼吸障害が代謝活動を左右する液性物質の分泌と活性に重要な影響を与える可能性が明らかになりつつある6).睡眠時呼吸障害と生体の代謝活動に重大な影響を与える液性物質7)との相互関連を明らかにする研究の発展が待たれる.
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