Japanese
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特集 呼吸器疾患の自然歴
肺癌の自然歴
Natural history of lung cancer
宮本 宏
1
,
川上 義和
1
Hiroshi Miyamoto
1
,
Yoshikazu Kawakami
1
1北海道大学医学部第1内科
1First Department of Medicine, Hokkaido University School of Medicine
pp.961-967
発行日 1988年9月15日
Published Date 1988/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205322
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はじめに
わが国における肺癌は年々急激に増加しており,1985年には約28,500人の肺癌死亡者がみられた1)。これは全癌の総死亡の15%にあたり,20年前の約4倍であり,10年前の約2倍である。しかし,肺癌は早期診断や治療が非常に困難であり,征服するにはほど遠いのが現状である。肺癌は単一の疾患概念でみることができないほど,病因においても,臨床病態においても,治療に対する反応性,さらには予後の見地からみても,それぞれ異なった様相を呈する。このような多様性が肺癌の臨床を複雑にし,診断や治療,さらには予防を困難にしている。
肺癌は気管支粘膜の悪性変化から始まり,増殖し,宿主の死とともに消滅する。癌の自然歴の全過程を臨床的にみると,次の三つの時期を通る(図1):1)肺癌が発生してから探知されるまでの時期(undetectable phase)。2)臨床的な症状はないが,X線学的に,または細胞学的に探知される時期(preclinical phase)。3)症状が出現し,癌の自然歴の終末時期(clinical phase)。この肺癌の自然歴の中で,悪性細胞は生物学的に重要な性質を持つようになる:1)いくつかの異なった組織型,2)早期の遠隔転移,3)多様な増殖速度などである。
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