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漸増運動負荷試験中に観察される嫌気性代謝閾値(無酸素性作業閾値ともよばれる,anaerobic threshold:AT)の各種の領域における有用性が広く認められ,近年では特にその臨床応用が盛んに行われてきている。呼吸・循環器領域における臨床応用では,診断の補助手段としてのATの有用性や,最大酸素摂取量(VO2max)と同様な運動耐容能の評価指標としてのATの意義が注目されている。前者の例としては慢性呼吸器疾患や冠動脈疾患における応用についての報告1〜5)が,後者では主として心疾患患者のリハビリテーション段階における運動耐容能の評価への適用についての報告6〜9)がみられる。さらに今日的な予防医学的観点からは,成人病予防を目的とした一般の中・高年齢者の運動処方の作成や運動耐容能(有酸素性作業能)の評価を行う上で,VO2maxとは異なり亜最大下(submaximal)運動負荷試験で測定が可能なATは,今後さらに注目される指標になると予想される。
一般にATの測定は以下のように行われる。漸増運動負荷試験中における代謝性acidosisの開始,すなわち血液中の乳酸値(LA)の安静レベルからの上昇開始点(lactate threshold:LT)として,もしくはその因果的変化と考えられる呼吸交換諸量(gas exchange parame—ters)のいくつかの特徴的な変化(表1に示す判定基準)がおこる点(ventilatory threshold:VT)を試験終了後にグラフ表示されたものから視覚的な判定によって求める。現在のこのようなAT決定方法には,以下に示すような基本的な問題点を含んでいる。1)LTをATとすることが妥当であるが,LAの連続的測定を各種領域でroutineとして行うことは現実的でない。そのため,LTに比較して測定が容易なVTが多用されるが,VTの決定はグラフ表示された呼吸交換諸量を判定者が判定基準に従って視覚的に行うために,主観的要素が混入しやすく,判定者内・間の変動が存在し信頼性に乏しい。
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