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急性心筋梗塞初期の不整脈による死亡率は高く,特にそのほとんどが心室細動に起因する。したがって,この心室細動が起こる機序については従来より種々,研究されてきている1〜5)が,これには交感神経緊張,すなわちcatecholamineが大きく関与していると言われている。Catecholamineは心筋のaction potential durationを短縮し,そのrefractory periodを変化させるとされ6),急性心筋虚血発症に伴なったcatecholamine濃度の上昇がこの致死性不整脈の原因であると考えられている7,8)。
我々は,以前より,実験的心筋梗塞犬を使用して梗塞作成15分後にcyclic AMP(c-AMP)の合成酵素であるadenyl cyclase活性の有意の上昇を梗塞部で認め,c-AMPの分解酵素であるphosphodiesteraseの活性には異常なく,心筋梗塞発症直後に心筋内にc-AMPが増加することが示唆される結果を得た9)。その後,各種薬剤を投与後の心筋c-AMP濃度を測定中,phosphodiesterase阻害剤とも言われるaminophylline投与時の,心室細動発生群の心筋内c-AMP量の有意の高値を見いだし10)。心筋梗塞初期の心室細動と心筋内c-AMP値の上昇の間に深い関連があることを見いだした。又,Opieら11)やLubbeら12)は不整脈の進展におけるc-AMPの役割について強調し,norepinephrineの不整脈作用は増加したc-AMPの効果を通じて発現されることを示唆している。しかしながら,急性心筋虚血における心室性不整脈の出現の原因となっているのはcatecholamineであるかc-AMPであるかに関しては現在でも未だ結論が出ていない。
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