Japanese
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特集 伝達物質と受容物質
総説
シナプスとcyclic AMP
Synapse and cyclic AMP
宮本 英七
1,2
Eishichi Miyamoto
1,2
1大阪府立中宮病院
2大阪大学医学部高次神経研究施設
pp.265-276
発行日 1974年8月15日
Published Date 1974/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903003
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はじめに
1958年Sutherland一派は肝抽出物を用いて,エピネフリン,グルカゴンなどのホルモン作用を再現してみせ,その作用を仲介しているcyclic AMPを同定した1)。無細胞系で高次の生命現象であるホルモン作用がcyclic AMPという一つの物質の仲介によることが明らかになつた。その後このようなホルモン作用の伝達因子としてのcyclic AMPの働きは多くの系で見出され,さらに敷衍されて,細胞外の情報を細胞内に伝達するsecond messengerとしての地歩を確立するに至つたのである。
脳神経組織の化学伝達系においては細胞間の情報が化学伝達という形で神経ホルモン(化学伝達物質)によつて伝えられる。他臓器にみられるホルモンとその標的組織あるいは標的細胞との作用伝達機構に関与する様式の類似性から,cyclic AMPが化学伝達機構に関与している可能性は高い。しかしながら,cyclic AMPがシナプス活動に何らかの役割を果たしていることを示す研究はまだ端を発したばかりであり,十分な証拠を得たとはいいにくい。発展の途上にあるといえよう。
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