特集 カテコールアミン
冠動脈結紮後のイヌ心筋norepinephrine含量とglycogen含量の減少の神経性メカニズム
酒井 兼司
1
,
安孫子 保
1
1旭川医科大学薬理
pp.1111-1114
発行日 1984年11月15日
Published Date 1984/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204537
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冠動脈の結紮は,心筋glycogen代謝を促進する(gly—cogen phosphoryase活性の上昇,glycogcn含量の減少およびglucose 6-phosphate (G6P)の増加)1,2)。また虚血による心筋glycogen代謝の促進はreserpineやpropra—nololの前投与によって抑制されることが知られている3)。これらの事実は,冠動脈結紮によって心筋中に遊離型のcatccholaminesが増加し,そのcatecholaminesがglycogen代謝の促進をひきおこしている可能性を示唆している。冠動脈結紮による虚血部心筋norepineph—rine (NE)含量の減少は4),冠動脈結紮によってNEの遊離が増加していることを裏づけるものの1つと考えられる。
ところで同じ心臓であっても,虚血になっていない部分の心筋(非虚血部心筋)は正常な心筋とみなされてきた。従って,この非虚血部心筋における代謝変化について調べた報告はほとんど見あたらない,先に我々は,冠動脈を結紮すると,虚血部においても非虚血部においても心筋glycogen phosphorylase活性が上昇することを報告した。さらにその活性上昇がhexamethoniumの前投与や星状交感神経節の切除によって消失することを報告した5)。この実験結果から,冠動脈結紮によって,心臓に入る遠心性の交感神経が興奮し,心筋全体にNEが遊離し,虚血部のみならず非虚血部心筋でもglycogenphosphorylaseの活性上昇がおこるのではないかという仮説が考えられる。
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