Japanese
English
解説
糖尿病の肺
Studies of the lungs in diabetes mellitus
須加原 一博
1
,
森岡 亨
2
Kazuhiro Sugahara
1
,
Tohru Morioka
2
1Dept.of Medicine, National Jewish Hospital and Research Center
2熊本大学医学部麻酔科
2Dept. of Anesthesiology, Kumamoto University Medical School
pp.1287-1294
発行日 1983年12月15日
Published Date 1983/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204354
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糖尿病患者は,アメリカの550万人を含め,世界中で少なくとも3,000万人はいるといわれ,現在なお増加の傾向を示している1)。糖尿病の成因はいまだ明らかでないが,インスリンの絶対的ないし相対的な不足が糖質のみならず脂質,蛋白質代謝など生体の広範な代謝異常から,全身にmicroangiopathyなど諸種の障害をもたらす2)。肺においても,当然毛細血管の異常や各種生体物質の合成機能の障害が予想されるが,「糖尿病の肺」については,感染症を併発しやすいことやacidosis時の呼吸パターンの変化以外にあまり注目されていなかった。
著者らは,早くから糖尿病患者の動脈血酸素分圧(PaO2)が低下していることを指摘し3〜5),肺毛細血管や肺表面活性物質(surfactant)の異常による肺機能低下が原因であろうと推論し,実験的な証明をしてきた6〜9)。最近,糖尿病患者の2,3—diphosphoglycerate (2,3—DPG)の増加10)やglycosylated hemoglobin HbAIcの増加11,12)などの糖尿病での組織内低酸素状態と関連する一連の事実が示唆されるようになり,「糖尿病の肺」が関心を呼ぶようになってきた。
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