呼と循ゼミナール
心臓病の非観血的診断法(1)
吉川 純一
1
1神戸中央市民病院循環器センター内科
pp.1140
発行日 1981年11月15日
Published Date 1981/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203870
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僧帽弁狭窄(mitral stenosis:MS)
内科領域でもっとも多い弁膜疾患がMSである。本症の特徴的な聴診所見,すなわち「fout-ta-ta-rou」と表現されるMS melodyは,約120年も前から知られるところである。したがって,聴診は,本来MSの診断に際してもっとも重視されるべきものではあるが,最近登場し,急速に発達した超音波診断法は,様相を一変させた。なぜなら,探触子の一触により本症がほぼ確実に診断されるのみならず,重症度の評価や合併の診断,手術適応の決定までが可能となるからである。現代の医師が聴診器をあてるより探触子を握りたがるのは,やむをえないところもあろう。このように超音波診断法はMSの診断に際して決定的な意味を持ち,本症をしてもっとも診断の容易な疾患にしてしまったのは,まさに"革命的"でさえある。
しかしながら,日常の臨床で意外と見逃されているのがMSである。とくに老人ではそうである。心房細動を呈する老人では,ついその原因を虚血や変性と考え放置しがちであるが,MSが隠れていることも少なくない。
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