呼と循ゼミナール
僧帽弁逸脱症でみられるSAM
小川 聡
1
1慶応大学内科
pp.62-63
発行日 1980年1月15日
Published Date 1980/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203504
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大動脈弁閉鎖不全症で僧帽弁エコーの収縮期異常前方運動(SAM)が観察され,それが腱索由来であることは既に示した1)。僧帽弁逸脱症においても同様の所見がみられ,肥大型心筋症のSAMとの鑑別が問題になる例が少なからず経験される。
ここに示す症例は49歳女性で,狭心症様の前胸部痛を訴えて来院。心尖部にて収縮期雑音を聴取された。図1は通常の記録方法で得られたMモードエコー図であるが,僧帽弁は拡張期に前尖,後尖ともに明瞭に記録されており特別な異常を認めない。一方,収縮早期に,閉鎖位にある僧帽弁エコーより離れて急速に前方,すなわち心室中隔方向へ動く異常エコーが認められる。収縮中期には平坦となり,僧帽弁エコーと平行になっている。収縮末期には不連続となるが,一度後方へ下った後,再び前方に動いている如くみえる。この所見は肥大型心筋症でみられるSAMと類似しており,しかも本図ではnear gain調節が不十分なため,心室中隔エコー,特にその右室面が鮮明でなく,計測方法によっては心室中隔の厚さが1.3〜1.5cmにとられる部位もあり,誤ってASHと診断される可能性もあるエコー図である。
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