呼と循ゼミナール
mobile unit
高木 誠
1
1京都市立病院内科循環器
pp.766
発行日 1979年7月15日
Published Date 1979/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203403
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救命救急の目的は患者の生命を守ることにあり,そのためには最善の手段を求めて常に進歩改善の努力をすることが医療の基本とならねばならない。
ナポレオン時代の戦場では軍医は前線から約2.5マイル後方の野戦病院にあり,戦傷兵は前線から馬車で病院まで後送されて初めて医師の治療が受けられる状態であった。戦線で負傷してから後送されて治療が開始されるまでには平均24時間前後を要し,多くの負傷兵は途中で死亡してしまうか,苦しみ続けて瀕死の状態に陥る者も少なくなかった。この状況をまのあたりに見た若い外科医Larreyは少しでも多くの負傷兵の命を守るために,自ら小型の馬車に乗り込み,必要な器具を積み込んで前線に至り,その場で負傷者の治療を開始することを思い立った。これが,救急医療での世界最初のmobile unitとされている。この方法は戦場外科の革命的改善をもたらしナポレオンもこのmobile unitを当時の最も優れたアイデアの一つであると賞讃している。
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