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講座
酸素化に伴うヘモグロビン高次構造の変化
Conformational changes of hemoglobin on oxygenation
中馬 一郎
1
Itiro Tyuma
1
1大阪大学医学部第1生理学教室
1Department of Physicochemical Physiology, Medical School, Osaka University
pp.664-670
発行日 1977年8月15日
Published Date 1977/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203080
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ヘモグロビンの酸素平衡曲線が特徴的なS字状を呈するのは,ヘモグロビンと酸素との結合が協同的であるためであって,この現象はホモトロピック効果と呼ばれている。他方,ヘモグロビンと酸素との結合は,酸素とは結合部位を異にする2.3—diphosphoglycerate (DPG),H+,CO2などの非ヘムリガンドによって影響を受け,この作用はヘテロトロピック効果と名付けられている。これらの両効果は,アロステリック効果と総称されるが,ヘモグロビンが,肺胞における酸素の摂取と末梢組織における酸素の放出という二つの使命を,効率よく果たすために必須のものであって,呼吸生理学上きわめて重要な現象である。
一方,近年のX線回折法の画期的進歩によって,ヘモグロビンの高次構造が次々と解明され,現在では0.28nmまで分解能が向上している。その結果,四つのヘムに全部酸素が結合しているオキシ型と,全く酸素が結合していないデオキシ型とでは,ヘモグロビン分子の高次構造が顕著に相違することが明らかとなった。そして,ヘモグロビンにアロステリック効果が発現するのは,ヘムの酸素化に伴って,ヘモグロビン分子の高次構造が,束縛の強いデオキシ(T)状態から,束縛のとれたオキシ(R)状態へ転移するためであると説明されている。
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