呼と循ゼミナール
肺血栓塞栓症の多様性
小出 直
1
1東京大学第2内科
pp.594
発行日 1975年7月15日
Published Date 1975/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202785
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前2号にわたって産褥性血栓症について触れたが,一般に肺血栓塞栓症は肺炎や肺水腫と誤診されがちである。これには,基礎に心肺疾患が多いことのほか,本邦では西欧に比べて血栓塞栓症が少いという定説,肺塞栓の三主徴(血清中のビリルビン増加・LDH増加・GOT正常)という古典的知識,ならびに血栓の起り方による臨床所見の多様さ,などが関係していると思われる。
我国での肺血栓塞栓症の頻度は,1958年から1967年までの全国剖検例中1.01%と報告されているが1),長谷川が指摘しているように,この種の数字だけでは本邦での実態はうかがい切れない2)。例えば1963年までの東大第2内科の剖検例では61%の頻度であり,その69%が心疾患に合併して生じたものであった3)。顕微鏡的な微小血栓まで入れれば,頻度は更に高いものと思われる。
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