巻頭言
臨床心臓病学と教育
渋谷 実
1
1東京女子医科大学日本心臓血圧研究所内科
pp.635
発行日 1974年9月15日
Published Date 1974/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202659
- 有料閲覧
- 文献概要
一昔前の心疾患の診断法は聴診法であり,心雑音がきかれると先天性心疾患であろうと後天性弁膜症であろうと何れも弁膜症で片付けられていた時代があった。戦後心臓カテーテル検査法が導入されると,労力の多い検査だけに,その検査データに高い評価を与え,ウエイトをおきすぎ,他の検査データである臨床所見,心電図所見,レントゲン所見を軽視したために,患者の検査データを公平に評価せず,そのための誤診がかなりあった経験がある。反省してみると何れも患者の検査データを公平に評価する能力にかけていたためである。
最近の循環器疾患の診断法には著しい進歩がみられる。シネによる心臓血管造影法,冠状動脈造影法,His束心電図検査,radiocardiogram,超音波心臓診断法など枚挙にいとまがないが,これらの検査法の多くは,invasiveな技術を用いた検査法であり,多かれ少なかれ肉体的にも経済的にも患者に苦痛を与える。non-inva—siveな検査法である心音,心雑音の記録,心尖拍動や他の脈拍の記録は一方では心臓カテーテル検査や心臓血管造影検査のデータと対比して,それぞれ心音図や脈波の解析に精度を増して来た。また一方では我々は日常の心疾患患者の診療にあたり,聴診技術や触診技術の進歩をもたらし,かなりの正確さで心疾患の診断,心筋の状態,重症度の判断に役立っている。心電図と臨床との結びつきやレントゲンの判読の進歩についても同様のことがいえる。
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.