病態生理講座
心臓病の病態生理
太田 怜
1
1東京大学田坂内科
pp.63-66
発行日 1961年5月10日
Published Date 1961/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202334
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§はしがき
心臓病の病態生理は,われわれ医者の間でも大変むずかしい問題であります.心臓病の徴候では,動悸や呼吸困難や浮腫が代表的なものと考えられ,その状態を心不全と呼んでいます.しかし,すべての心臓病が心不全状態をあらわすわけではなく,心臓病がありながら,普通の人とかわらぬ生活をしている人もいます.これらの状態を代償状態といいます.しかし,代償状態にある人でも,たとえば水泳をしたり山のぼりをしたりすれば,普通の人より動悸や息切れがしやすくなります.
また,普通の人でも,100米を全速で疾走したり,マラソンをしたりすれば,途中で,息切れや動悸のために苦しくなつたり,時には胸がいたくなり,全身の力がぬけて了つてたおれることもあります.運動選手がゴールインした時の状態などは,心臓病患者の呼吸困難と大したちがいはないようです.とすれば正常の心臓に重労働をさせた時,代償された心臓に軽労働を課したとき,それに安静状態にある心不全の3者は,それぞれかわりがないことになります.
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