巻頭言
心筋梗塞の予知
新谷 博一
1
1昭和大学医学部第3内科
pp.975
発行日 1971年12月15日
Published Date 1971/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202329
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心筋梗塞はわが国においても,近年急速に増加していることが注目されている。CCUをはじめとする診療面の進歩も著しいが,いわゆるpower failureを合併した重症例などにぶつかると,われわれの無力さが痛切に感じさせられ,死亡率の高い重篤な心疾患であることは依然として変わりない。したがって,かような,きわめて重篤な病気を起こさせないように予防することが最も望ましく,そのためには心筋梗塞を起こすことを予知できないかということが重要な問題となってきた。しかし,心筋梗塞の発病は急激に起こることが多く,その発病の予知は非常に困難な問題であり,不可能であるとさえいうものも少なくない。近年における虚血性心疾患の疫学的研究,とくにprospective studyによって,いわゆるcoronary risk factorという概念が注目されていることはよく知られている。血清脂質異常,とくに高コレステロール血病,高血圧,肥満,糖尿病,喫煙,虚血性心疾患の家族歴,心電図異常,食餌,身体運動の不足,情動ストレス,高尿酸血症ないし痛風などがそれである。これらは主としてアメリカを中心とする研究成果に基づくもので,わが国においてもこれがそのままあてはまるか否かは,今後の研究にまつ点も少なくない。かようなrisk factorを追求することによって,ある程度心筋梗塞の予知ができるのではないかと考えられている。
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