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疾患概念・病因
急性心筋梗塞(acute myocardial infarction,AMI)は,冠動脈内の血栓などによる冠動脈の完全閉塞の持続または冠動脈の末梢血管床の塞栓により,心筋が不可逆的な損傷を受け壊死を起こした状態である.冠動脈完全閉塞により起こるAMIの場合,完全閉塞の状態で6時間経過すると,側副血行路がないときには閉塞した冠動脈の支配領域の心筋はほぼ完全に壊死に陥る.
その病因は,冠動脈内の粥状動脈硬化病変のなかでも薄い線維性被膜に包まれた脆弱で不安定な粥腫(プラーク)が血管内皮傷害や血管壁のストレス,炎症機転などにより破裂して,これが引き金となり周囲に血栓が形成され,急激に冠血管内腔の閉塞をきたすことにより心筋壊死を生じることによる.冠動脈内腔の狭窄が高度の病変部位に発症するとは限らず,むしろ狭窄はもともと軽度でありながら脆弱な不安定プラークが責任病変になることが多い.近年,病理所見および冠動脈内視鏡などを用いた臨床研究1~3)で,従来から知られていた冠動脈内に完全閉塞型赤色血栓(血小板・フィブリノゲン・赤血球より成る)を形成し心電図上ST上昇および異常Q波を生じて貫壁性のAMIに進展するST上昇型AMI以外に,冠動脈内に形成されるのは主に不完全閉塞型白色血栓(主に血小板より成る)だが,破砕したプラークと血栓とが微小塞栓として末梢血管床を閉塞し微小心筋梗塞や微小心筋傷害(minor myocardial damage)を生じて心電図上ST上昇や異常Q波が見られない非ST上昇型AMIがかなりあることが判明した.なお,冠動脈内プラークの破綻・びらんによる血栓形成による冠動脈の閉塞以外に,稀であるが冠動脈れん縮による完全閉塞によりAMIを起こすこともある.
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