Japanese
English
綜説
心肥大の本態と生理的意義
Myocardial Hypertrophy:Physiological Importance and Cellular Mechanism of Its Development
小出 直
1
Tadashi Koide
1
1東京大学医学部第2内科学教室
12nd Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.461-467
発行日 1971年6月15日
Published Date 1971/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202270
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Ⅰ.心肥大研究の背景
1960年代に入って研究者の関心が心肥大の病態生理に集中し始めた。殊にその成因論を巡って,蛋白,核酸代謝面への関心が華々しい。一見甚だ基礎的なこの主題に対して,研究者の多くが臨床家であることは,現代心臓病学のおかれた位置を雄弁に物語っている。すなわち心臓の基本的な機能であるポンプ作用が,物理的障害のみならず心筋自体の特性によっても大きく規定されることが明らかとなり,疾患単位としてもいわゆる原発性心筋症が未知の領域として残されている。疾患を心筋異常の観点から見直そうとする動向の中で,最も普遍的に見られる心筋異常として心肥大が脚光を浴びたのは当然といえよう。
心肥大に対して臨床家の立場から出てくる最も素朴な疑問の一つは,「心肥大は心臓にとって有利か不利か」,もう一つは「心肥大の原因は何か」であろう。これらについては従来諸大家が多数の概念を提供し,しばしば引用されるけれども,詳細に検討すると多くは不充分な知識に基づいた仮説にすぎず,決定的な知見はあまりに乏しい。著者は以下の各章で,我々が何を知り何を知らないか読者と共に考えてみたい。
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