講座
Innocent Murmur
赤塚 宣治
1
Nobuharu Akatsuka
1
1東京大学医学部第1内科学教室
11st Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.469-475
発行日 1971年6月15日
Published Date 1971/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202271
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はじめに
心血管系で聴取する雑音で,無害と考えられる雑音を現在innocent murmurと呼んでいるが,こう呼ばれるに至る歴史に関しては,種々の記述に詳しい。Laen—necが聴診器により心雑音を認め,それを"Bellowssound"と呼んだが,彼自身この雑音を示すすべての者に心疾患が存在するのではないことを認めていたとされる。その後も,心雑音を示しながらも,直接器質的心疾患と結びつかない状態があることが報告され続けてきた。
"Innocent murmur"という言葉はおそらくWilliam Evans1)が1943年に用いたのが初めてであろうとされている。その後この言葉が広く用いられるようになったが,その定義に関しては,現在も一定のものが認められていない。innocent murmurの解釈の例をあげれば,1)心疾患がない場合に聴取される雑音,2)心内外の構造あるいは,機能の異常が認められない場合に生じる雑音であり,将来も心疾患と結びつかないもの(予後を含める),3)2)と同様の所見を聴診の時点でのみ認めるもの(予後を含めない),4)構造上の異常を伴うかもしれないが,機能および予後をそこなわない場合,つまり,臨床上の重要性を有しない場合に生じる雑音,などである。
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