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はじめに
高位後壁硬塞(high posterior infarction)または純後壁硬塞(true posterior, strictly posterior or strictly dorsal infarction)と呼ばれる心筋硬塞の心電図変化に関しては,たしかに古い心電図学の教科書に記載がないのではあるが,比較的新しい教科書たとえばGold—man1)のもの, Massie and Walsh2)のもの, Marriott3)のものなどのいずれにも記載されており,特別な概念ではなく,心臓病に少しでも興味を持っている医師であれば誰でも知っているものである。しかし,実際に心電図上だけからこれを診断することには多くの困難があり,右室肥大,右脚ブロック,counter-clockwise rotationなどと鑑別に困ることは多い。もちろん,心電図のみから心筋硬塞の部位とその拡がりを診断する時に見られる不正確さは,当然この場合にもおこり,側壁硬塞もあるかどうか,inferiorまたはdiaphragmaticと呼ばれる心臓の底部にまで硬塞が及んでいるかどうかなどという問題は常におこってくる。一般的に言って,New York Heart AssociationのCriteria Committeeで出している「Diseases of the heart and blood vessels, nomenclature and criteria for diagnosis4)」に述べられているように,心筋硬塞の部位は心電図からgross wayで定められるが,確実な解剖学的決定には,全く不正確と考えられる。
このような意味から,普通行なわれる12誘導心電図で,Q波を示さない心筋硬塞の形として,後壁の硬塞心電図波形のmirror imageが前胸部の誘導に出現することがある事実を知っていれば,特にhigh posterior infarctionという限局された部位の心筋硬塞を特殊なものとして考える必要性は少ないと思われる。また,単にmirror imageが前胸部の誘導に見られる心電図となれば,日常臨床心電図を診断する際に必ずしもめずらしいということはできないものであるから,容易に実例を見出すことができるであろう。
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