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講座
老人心の病理解剖学的特徴—定量化の試み
Some Pathological Characteristics of the Aged Heart:A Quantitative Study
細田 泰弘
1
,
秦 順一
1
Yasuhiro Hosoda
1
,
Jun-ichi Hata
1
1慶応義塾大学医学部病理学教室
1Department of Pathology, Keio University School of Medicine
pp.969-974
発行日 1970年11月15日
Published Date 1970/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202203
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はじめに
多くの生物現象と同様に,加齢ないし老化も,成長,成熟を経て死に至る一連の経年性変化の中で,明確に一線を画することが困難なことは当然である。
しかしながら,一方では老人性疾患と生理的老化との差異を正しく把握することが老人性疾患を取扱う上に必要となってくる。
心臓の加齢による形態学的変化については,すでにLev5)7),McMillan and Lev8)9)の詳細な報告にほとんど記載しつくされているといって良い。またlipofuscinに関してもStrehlerら17)の研究以後,焦点はlysosomeとの関連性,生化学的特性などへ移ってきているように思われる。
しかし老人心に関する病理解剖学的な面からの定量的研究はきわめて少ない15)17)18)。
特に心力を規定する最大要素である心筋重量に関しては,Reiner15)が少数例の検討を行なっているのみで,他に報告はほとんどなく,我が国でも特に老人心を対象とした研究は見られないように思われる21)。また,いわゆる褐色萎縮といわれる状態は高度のlipofuscin沈着という老化の形態学的表現を一つの特徴とする心萎縮の状態であり,しばしば臓器老人性萎縮の一つの典型とされるものであるが,栄養障害を伴う慢性疾患においても見られるものであり,これが老人性変化とどのような関係にあるか明らかでない。このような理由から我々は日本人老人心および褐色萎縮心に関して特に両心室を中心として若干の計測を行なった。
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